灰になるカウントダウン

このダジャレをMへ。
必要なものをスーツのポッケに詰め込んで、手ぶらで家発。
昨日も行った玉出の葬儀場へ。
出勤ラッシュと重なったため、なんだか落ち着かぬまま会場着。
何度出ても、葬式というのは慣れない。
一緒に芝居をしていたNが、わざわざ富山から来てくれる。
こんなことでもないと、旧い友人に会う機会はない。
そうやって、人生というのは進んでゆく。
火葬場へ移動。
Mは新潟の出身で、両親・弟さんだけが大阪まで来ている。
大阪が不慣れなせいか、あれこれ大変そうだ。業者の段取りも悪い。少し疲れる。
火葬場着。
窯に入れてしばし休憩なのだが、休憩施設が館内にない。
都会ではこうなのか。
田舎出身の岩橋にはちと衝撃的。
普通、あるだろう。畳の大広間で、簡単に食事やら酒やら頂くような場所。
Mご両親も同様だったようで、ばたばたしながら近所の広い喫茶店へ移動。
遺族の時間潰しで食ってるような喫茶店
とりあえず飯を押し込んで、骨あげ。
焼き場で骨を拾ったのは、たぶん人生で2回目だ。
前拾ったときは、長期入院した挙句に亡くなった祖母だったので、骨はぼろぼろだった。
拾いにくかった。
若いやつの骨は、しっかりしてるな。
大腿骨なんかピカピカだ。
それを突き崩して拾うのが恐くて、
小さい骨をいくつか拾った。
拾いやすかった。
親御さんらと、Mが住んでいた家に行った。
形見分け、というか、引き払うので細かいものを持ってってくれということだった。
同じ大阪市内だった。
環状線ですぐだった。
じつは、この家には来たことはなかった。
今の俺の家にも呼んだことはない。
酒をやめたらいつでも来いと言ってたんだがな。
まあ、やめなかったわけだが。
岩橋は服には興味がないので、Mが好んで着ていたアロハを形見に幾らかもらい、以降は山積みになった本の整理。
ハイエナのように漁って、紙袋2杯分ガメた。
運ぶだけで汗が出る。
家に帰ってから数えてみたら、62冊あった。
とりすぎだ。
少しづつ読み始めている。
できるだけくだらない本を読もう。
読んだそばから捨てても構わないような本。
だが俺には本を捨てる習慣がない。
いずれこの本は、俺の本棚に、
俺の本と一緒に並ぶ。
混ざり合って、どれがどれだかわからなくなって、
俺の一部になる。
きっと忘れる。
どれがヤツの本で、どれが俺の本だったか。
外の定食屋で晩飯済ませ、風呂に入り、しばしぼんやり。
手持ち無沙汰にHDD編集など。
遅くならないうちに布団へ入るが、なかなか寝付けない。
いろいろと考える。
Mは、大学に入ってきたときからの知り合いだ。
後輩だが年はひとつ上だった。
偉そうで、バカで、
ずっと酒ばかり飲んでいた。
ヤツを芝居の世界に誘ったのは俺だ。
あまりに酒癖が悪いので劇団への出入りを禁止した。
でも、最後まで、クビにはしなかった。
あくまで休団なのだ。
だからヤツは、少なくとも俺の中では今でも劇団員だ。
いつでも復帰を許す。
酒やめたらな。
まあ、やめなかったがな。
とりあえず、しばらくは、
弔いの酒を飲もう。
俺が俺のために飲む酒なんか今はいらない。